熟年離婚を検討されておられる方へ

1 はじめに

熟年離婚というのは、読んで字のごとく、熟年夫婦が離婚をすることです。

 

ドラマで取り上げられ、流行語大賞にも選ばれた経緯もあるので、この言葉自体を耳にした方が多いのではないでしょうか。

しかし、熟年離婚をする場合にどのような法律上の問題があるかについて具体的に考えたことのある人は少ないかもしれません。

そこで、熟年離婚にまつわる法律問題について学んでいきましょう。

 

2 熟年離婚の特徴

熟年離婚は、その他の離婚と異なり、子が成人に達していることが多いでしょう。

そのため、離婚の際に、争われることの多い親権や養育費、面会交流といった問題は存在しないことが多いです。

一方で、夫婦でともに築き上げてきた財産が一定程度あったり、

住宅ローンを払い終わった不動産があったり、

また、これまで専業主婦だった女性はこれから働いて十分な収入を得ることが難しいなどの理由から、

財産分与の点でもめることが多いと考えられます。

 

3 財産分与について

(1)不動産について

夫婦の財産に不動産があって、すでにローンを返し終わっている場合、

その不動産にこれからも住みたいかなどを考慮して、双方とも今後の居住の希望がなければ、

売却をし、売買代金を折半して、今後の生活の資金に充てることが考えられます。

子が独立したため、一戸建て住宅に住む必要性がない場合などは、

上記の方法で話がつくパターンも少なくないでしょう。

一方、住宅ローンを返済中の場合は、今後の返済について考える必要があります。

残ローンが比較的少なく、売却して、ローンを返せる場合は、比較的問題は少ないといえます。

ですが、残ローンが売却金額を上回る、いわゆるオーバーローンの場合は、

どのようにするかを夫婦で話し合う必要があります。

また、これまで住んでいたのが、夫婦の一方の親から相続した財産である場合には、

夫婦の一方の固有財産となり、財産分与の対象にならないという可能性も考えられます。

この場合も、夫婦でよく話し合う必要が出てくるでしょう。

(2)預貯金について

夫婦が婚姻生活開始から、別居までに得た財産については、その名義にかかわらず、

2分の1ずつ分けるのが、今の日本の財産分与の考え方です。

夫のみが働いており、妻が専業主婦で支えていた場合というのが、

現在の熟年世代には多い夫婦のあり方かもしれません。この場合でも、夫の名義の口座の預金であっても、その預金は、妻と2分の1ずつ分けることになります。

この場合、結婚前からの預金については、

夫婦各自の固有財産として財産分与の対象とならない可能性が高いことに注意が必要です。

特に、熟年夫婦の場合は、今後収入が大きく増えていく可能性は少ないため、

年金受給までの生活資金を財産分与による資金で賄うことができるのか、検討したほうがよいでしょう。

(3)年金分割

将来的には公的年金が夫婦それぞれにとって、大事な収入源となります。

そこで、平成20年3月31日より前に配偶者の扶養に入っていたことがある方は、

離婚時に年金分割について検討する必要があります。

専業主婦にとっては、年金分割は、重要ですが、相手側の年金受給額を減らすことになりますので、

相手と合意をすることが必要です。

なお、年金分割は、厚生年金(旧共済年金も含む)についての割合を分割する制度ですので、

婚姻生活中、自営業で、国民年金に加入していた夫婦は対象となりませんので、ご注意ください。

 

4 離婚の合意

日本でも価値観の多様化にともない熟年離婚が増加していますが、夫が働き、

妻は専業主婦をしてきたというご家庭では、ご夫婦のいずれかが単身の生活になることの不安を感じることが多いため、

離婚の話自体が進まないことも少なくありません。

家事ができない夫が離婚を拒んだり、経済的な不安を抱える妻が離婚に難色を示したりする例が多く見られます。

夫婦の話し合いで離婚の合意をすることが難しい場合は、調停等で話を進めていくことも考えられます。

 

5 まとめ

熟年離婚をめぐる問題点について、少しは理解いただけたでしょうか。

熟年離婚にも特徴があり、各夫婦によって、離婚の進め方も異なります。

お困りごとがあれば、弁護士にお気軽にご相談くださいね。