慰謝料が時効にかかる！？
離婚で発生する金銭的な問題の中でも、大きなトピックである「慰謝料」。離婚慰謝料とも呼ばれます。この離婚慰謝料は、相場や金額だけが注目されがちですが、実は「時効」があることをご存じでしょうか。つまり、ある期間内に離婚慰謝料を請求しなければ、慰謝料をもらえなくなる可能性があるのです。今回は、離婚慰謝料の時効、時効を中断する方法について解説します。
離婚慰謝料の時効～意識すべきは「3年」
結論からいうと離婚慰謝料は、「3年」が時効になります。ではいつから3年かというと、「離婚した日」からカウントして3年です。ただし、厳密には次のような時効の計算方法があります。
1.不貞行為があること、またその相手を知ったときから3年
2.離婚した日から3年
この「3年」という数字はどこから来ているのでしょうか。これは、民法でいうところの「不法行為による損賠賠償請求権」に沿っています。
“第724条 (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。”
この条文に沿って考えると「不倫や浮気を知った日から3年以内なら、慰謝料を請求する権利がある」となるわけですね。ただし、ここでひとつ注意しなければならないことがあります。それは、同じ3年でも「1」と「2」を比べたとき、その時期に差がでるということです。
例えば2015年の12月に夫が不倫をしていることを知ったとしましょう。
このとき、不貞の慰謝料については、1の計算方法に従い、時効の完成日は「2018年の12月」ですよね。
しかし、その後の話し合いを経て2016年の3月に離婚した場合に請求する離婚の慰謝料の時効の完成日は、２の計算方法を踏まえ、「2019年の3月」になります。同じ3年でも、不貞の慰謝料を請求するか、離婚の慰謝料を請求するか時効が成立する時期が変わるわけです。
これについては、過去の判例（最高裁判所判決昭和４６年７月２３日）から、不貞と離婚の間隔が短い場合は、1の時効が成立していても、2（離婚した日）からカウントして3年以内であれば、慰謝料が請求できるというのが現在の解釈です。
しかし、不貞から離婚までの時間が経ちすぎており、不貞を許したといえるような客観的状況がある場合には、離婚した日から3年以内だからといって必ずしも慰謝料が請求できるわけではないので注意が必要です。
離婚慰謝料の時効を中断するには？
時効までの期間はある行為によって「中断」させることが可能です。つまり、月日のカウントをストップできるわけですね。そのため、離婚した日からあと1か月で3年たってしまう……といった場合には、時効の中断を急ぐ必要があります。
ではどうすれば時効が中断されるかというと、主に2つの方法で中断が可能です。
・内容証明郵便によって慰謝料を請求する（催告）
内容証明郵便で、慰謝料の請求を行えば、時効の中断が可能です。これを「催告」と呼びます。さらにこの催告から6か月以内に裁判上の請求をすると、催告までの間に進行していた時効がリセットされこれ以上進行しないという大変便利な制度です。時効が迫っている場合は、急いで内容証明郵便により慰謝料を請求しましょう。
・裁判上の請求を行う
裁判上の請求とは、裁判所を通じて「訴訟の提起、民事調停や即決和解、支払い督促の申し立て」を行うことです。このいずれかを行うと時効の期間がリセットされ、ゼロから再スタートすることになります。ただし、裁判上の請求には準備に時間がかかるため、まずは、内容証明による時効の中断を優先したいところです。
3年経過すると慰謝料をもらえる可能性はゼロになる？
基本的には請求出来なくなると考えて良いでしょう。しかし、相手が時効に気づかずに支払いに応じた場合は、この限りではありません。また、相手方が「時効の援用（時効が完成していることを主張する）」を行わない場合も同様です。
したがって、離婚から3年以上経過していたとしても、慰謝料を回収できる可能性はゼロではないのです。
ただし、可能性はかなり低いため、不貞や離婚から3年以内に行動を起こすことをお勧めします。
弁護士に相談してスムーズな慰謝料請求を
ここまでの内容から「時効は原則として3年」「時効を中断し、ゼロから再カウントする方法」があることは理解できたかと思います。しかし、これを実行するにはさまざまな書類の作成や、法的な手続きが必要です。時効が間近に迫っている中で、これらをスムーズに行うのは難しいかもしれません。また、裁判所を通じた手続きには専門的な知識・スキルが求められることもあるため、弁護士への依頼を検討していきましょう。「もらえないとあきらめていた慰謝料」を取り戻すことに繋がりますよ。
