離婚の種類

第1 離婚の主な種類

離婚には、主に、協議離婚、調停離婚、訴訟による離婚があります。

 

第2 協議離婚

 1 協議離婚とは

協議離婚とは、当事者の話し合いによって成立する離婚のことです。

法律上、離婚届の提出によって成立する離婚を「協議離婚」と呼びます。

特に、話し合いらしい話し合いをしていない場合でも、離婚届を提出した場合は、「協議離婚」になります。

あくまで当事者間の話し合いによって成立させる離婚なので、話し合いの結果が、明らかに公の秩序や善良な風俗に反していない限り、後から、話し合いの結果をさかのぼって無効とすることはできません。

そのため、夫婦間の力関係などにより、一方的な取り決めがなされるリスクが高いといます。

夫婦の一方とまともな話し合いができない場合には、弁護士にご依頼いただくことで、望ましい話し合いが実現できることもあります。

離婚を急ぐあまり、変な取り決めをする前に、お気軽にご相談ください。

 2 親権者欄への記載について

日本の場合、未成年者の親が離婚する場合、夫婦のいずれが親権を持つかを決めなければなりません。

そのため、離婚届には、親権者を定める欄が設けられており、この欄に記載がない離婚届は窓口で受け取ってもらえません。

 3 証人欄への署名について

軽率な離婚届の提出を防ぐため、離婚届に署名する際に判断能力に問題のない成人2人が離婚届に署名することが条件とされています。

 4 離婚届の提出方法について

(1)提出する役場について

 

ア 夫婦の本籍地のある市町村役場に提出する場合

夫婦の本籍地のある市町村役場に離婚届を提出する場合は、戸籍謄本を一緒に提出する必要はありません。

イ 夫婦の本籍地以外の市町村役場に提出する場合

夫婦の本籍地以外の市町村役場に離婚届を提出する場合には、離婚届と一緒に夫婦や未成年者の子どもの戸籍謄本を提出する必要があります。

そのため、夫婦の本籍地以外の市町村役場に提出する場合には、離婚届を提出する前に夫婦及び未成年の子どもの戸籍謄本を取得しておく必要があります。

戸籍謄本は、郵送でも取得することはできます。

ご自身で郵送によって戸籍謄本を取得される場合は、本籍地の窓口にお電話の上、郵送での戸籍謄本の取り方をお尋ねされることをおすすめいたします。

(2)提出方法について

離婚届は、郵送でも夜間窓口でも提出することができます。

ただし、形式的な条件がそろっていない離婚届は受理してもらえません。

そのため、特に、郵送の方法による場合、確実に受理してもらうため、郵送する前に、お近くの窓口で形式的な記載事項に問題がないか確認してもらうことをおすすめいたします。

 5 協議の結果を残すには

(1)公正証書を作りましょう

夫婦間での取り決めを、個人的に紙に残したとしても、一方が約束を破る危険性があります。

そのため、夫婦間で取り決めをする場合は、公証人役場で、公正証書を作成する必要があります。

(2)強制執行認諾文言をつけておくことをおすすめします

仮に、別れる相手にお金を支払うことを約束させたとしても、後日、その約束は破られるおそれがあります。

公正証書を作る場合に強制執行認諾文言をつけておけば、約束が破られた場合、比較的簡単な手続きで、相手の財産を執行することにより、もらえるはずだったお金を回収することができます。

ただし、強制執行認諾文言がつけられるのは、一方の当事者が、他方の当事者に対し、いつ、いくら支払うか、はっきり約束をしている場合に限られます。

一般の方だけで協議を行った場合、残念ながら、強制執行認諾文言をつけられない場合が多く存在します。

強制執行認諾文言をつけるためにも、どのような協議条項にしたらいいのか、事前にご相談されることをおすすめいたします(なお、公正証書の具体的な文言のご相談に関しては、初回相談の場合でも、有料になり、30分ごとに5400円をお支払いいただいております。あしからず、ご了承ください。)

(3)公証人役場への過度な期待にご注意を

公証人役場は、当事者間で取り決めた内容について後日争いになることを防止するなどのために、当事者の取り決めを公的な文書に残すための役所です。

つまり、公証人役場は、当事者間で取り決めた内容について、公的に記録するにすぎず、当事者間の取り決めを仲介する場所ではありません。

そのため、公正証書を作る場合には、作成予定の公正証書について、あらかじめ公証人役場に知らせ、役場から伝えられる、当日必要な書類等について、準備をしたうえで、約束の日時に訪問する必要があります。

事前の約束なしに公証人役場を訪れても、すぐに公正証書を作ってくれるわけではありません。

また、約束当日に訪問しても、必要なものがそろっていない場合は、作成を断られます。

一般の方の中には、公証人役場の役割を誤解されている方が多くいらっしゃるようです。

そもそも、当事者間での話し合いが難しい場合は、協議を弁護士に依頼する必要や、調停を利用する必要があります。

ご自身の場合に公証人役場を利用できるかどうかを知りたい場合は、お気軽にご相談ください。

第3 調停離婚について

1 調停離婚とは

調停とは、家庭裁判所において、調停委員会のかかわりのもと、成立させる離婚をいいます。

調停委員会とは、家庭裁判所の研修を受けた一般人の中から、男女1名ずつ選ばれた調停委員とともに、裁判官1名で構成する委員会です。

調停委員会には、裁判官がかかわるため、調停の話し合いにおいては、家庭裁判所の意向が少なからず影響します。

例えば、夫婦の一方が離婚を望んでいないうえ、訴訟では離婚が認められないような場合には、調停でも離婚を成立させることは難しいといえます。

また、婚姻費用や養育費について、当事者の意見が対立する場合、仮に裁判になった際の水準を無視した形での話し合いの成立は難しいといえます。

その一方、調停は、あくまで、当事者の話し合いを前提としています。

そのため、調停委員会の関与のもの、当事者間で調停条項案がまとまれば、調停が成立しますが、話し合いが平行線をたどる場合は、調停は成立しないという特徴を持ちます。

話し合いが平行線をたどる場合、調停委員会から取り下げを進められるか、不調という形で調停は終了します。

さらに、調停は、間に調停委員が立って、話を進めるため、調停委員の心証をいかにつかむかも大事です。

なお、あくまで当事者の話し合いを前提とした手続きのため、調停委員会が調停の成立に向けて、あっせんしてくれることはありませんので、過度な期待はしないようにする必要があります。

このように、調停で離婚を成立させるためには、様々なことに気を配りながら、調停を進めていく必要があります。

2 調停のメリット・デメリット

(1)調停のメリット

相手との同席を望まない場合、申立の際にそのことを裁判所に伝えておけば、最後まで、相手と同席しないまま、調停が成立する可能性があります。

調停委員会は、相手方を裁判所に呼び出す時間帯をずらすことによって、なるべく相手方と裁判所で顔を会わせにくいように配慮してくれます。

また、そもそも、家庭裁判所は、調停成立まで、なるべく、当事者同士が顔を合わせないような形で作られています。

そのため、よほど運が悪くない限り、調停成立まで、相手と顔を合わせずに済ませることができます。

この点は、直接当事者とやり取りしなければならない協議離婚と比べ、大きなメリットといえます。

 

(2)調停のデメリット

調停は、あくまで話し合いによる解決を目指す手続きです。

そのため、調停委員会が、調停条項案の成立に向け、当事者の話し合いをあっせんしてくれるわけではありません。

調停委員は、研修を受けているからといっても、一般の方です。

また、いろんな考えをお持ちの調停委員がいらっしゃいます。

中には、残念ながら、DV加害者に気おされる調停委員や、自分をDV被害者と見せかけようとする相手のウソにごまかされてしまう調停委員もいらっしゃいます。

これらは調停のデメリットといえます。

3 調停についても弁護士に依頼するメリットについて

調停については、上記で指摘したようなデメリットがあります。

そのため、調停についても、経験豊富な弁護士にご依頼いただくことで、調停委員が相手の言い分だけを信じてしまう場合や相手に気おされてしまうことを防止することができます。

弁護士が介入したとしても、調停委員が相手の肩を持つ場合も、残念ながらあり得ます。

こういった場合でも、弁護士にご依頼いただくことで、調停委員を通じて示される相手の言い分にむやみに振り回されることなく、妥当な解決を目指すことができます。

また、訴訟で勝てる事案の場合には、不必要に長引く可能性のある調停にいつまでも付き合う必要はありません。

これまでの経験を活かし、ご依頼いただく案件ごとに適切な解決を目指して活動いたします。

4 弁護士以外に離婚をご相談されるデメリットについて

日本では、法的ないさかいの適切な解決のため、弁護士以外の国家資格を持つ人物が他人の調停に同席することは許されていません。

そのため、弁護士資格を持たない人物に離婚を相談しても、肝心な調停の席にはその人物はついてきてはくれません。

調停や場合によっては訴訟になることも見越したうえで、初めから弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

第4 訴訟による離婚について

 1 訴訟ができる場合について

日本は、調停前置主義といって、訴訟の前に原則として調停を経ていることが要求されます。

法律上、調停を経ることが難しい場合には、調停を経ずに訴訟することも許されています。

ですが、日本の裁判官は、慎重さを好むため、仮に、調停を経る必要がないと当事者が判断した場合でも、先に調停をすすめられることがあります。

そのため、よほどの事情がない限り、先に調停を経られることをおすすめいたします。

 2 訴訟で離婚できる場合は限られていること

相手の住所がわかっていれば、離婚訴訟を起こすことはできます。

ですが、相手が離婚を望んでいない場合、訴訟によって、強制的に離婚を成立させる場合には、離婚条件が必要です。

離婚条件とは、民法770条に定められている条件を指します。

つまり、夫婦の一方が離婚を望んでいない場合、裁判所が、民法770条に定める離婚条件を認めない限り、離婚はできません。

 3 「訴訟で離婚する」ことの意味

離婚訴訟は、裁判です。

裁判においては、ある法律効果を望む人に立証責任が課せられます。

立証責任とは、当事者間である事実の有無が問題となる場合、その事実が重要な意味を持つ法律効果を望む人物が、その事実について負わせられる主張立証責任のことをいいます。

例えば、離婚を望む人が相手の「不貞(浮気)」を主張する場合、その「不貞」の事実を具体的に主張立証することによって、裁判官が自信をもって「不貞」があったと認められる状態にならない限り、「不貞」の事実はなかったものとして扱われます。

 4 弁護士にご相談・ご依頼いただくメリットについて

上記でご説明した立証責任との関係上、訴訟によって離婚できるかどうかは、裁判官を説得できるだけの材料があるかどうかによります。

できる限り早い段階からご相談いただくことで、訴訟に踏み込んでいい事件かどうかの見込みを前提として、各手続きを進めることができます。

また、できる限り早い段階からご相談いただくことにより、相手が離婚に対する警戒心を持たない段階から、証拠を収集できるというメリットがあります。

万が一訴訟しても勝ち目がない事件では、協議や調停など、訴訟に至る前の段階で解決することができます。

一方、訴訟したほうが妥当な解決が得られる場合は、協議や調停で必要以上に譲歩することを避けることができます。

第5 一貫して同じ弁護士に相談・依頼されることが望ましいこと

残念ながら、事案によっては、最終的に訴訟で争うことを避けられません。

その際に、大事なのは、調停の当初から一貫した主張立証を行ったという実績です。

当事務所は、ご相談の時から丁寧な聞き取りを行うことで、万が一、訴訟になった場合も一貫した主張立証ができるノウハウを蓄積しております。

実際、調停の当初から一貫した主張立証を行うことで、証拠が少ない事件や不利な事情がある事件でも妥当な解決を勝ち取った実績がございます。

案件によっては、訴訟になることは避けられません。そのため、当初から、万が一、訴訟になった場合に備え、様々な案件について訴訟で勝訴した実績のある弁護士にご相談されることをおすすめいたします。