離婚調停で親権を有利に進めるためのポイント
1 はじめに
親権とは、未成年者の子(以下「未成年者」といいます。)を監護、教育し、その財産を管理するため、
その未成年者の父母に与えられた身分上および財産上の権利・義務をいいます。
夫婦が婚姻をしていれば、親権はその両親が共同で行使することになりますが、
離婚時には協議でどちらかを親権者と決めなければなりません(民法818条)。
そこで、離婚にあたっては親権者を決めることになりますが、夫婦間で話合いがまとまらなければ、調停や裁判で決めることになります。
調停は家庭裁判所を舞台にした話し合いです。
両親の話し合いだけに任せていては話しがまとまりそうにない場合は、裁判所が当事者の状況に関する証拠等をみて、
裁判所の案として、いずれを親権者にすべきかの意見を出します。それでも話し合いがまとまらない場合は、裁判所が裁判で親権を決めることになります。
そこで、離婚調停において、裁判所から、親権について有利な提案をしてもらうにはどのようにすればよいのかについて考えてみましょう。
2 調停とは
調停は、裁判所が関わる手続ですが、あくまで、当事者の話合いの場とされています。
しかし、裁判所が関与する以上は、当事者同士の意見をただ聞くだけではなく、
裁判所が実際の生活状況や家庭環境を調査したうえで、裁判所が親権についての意見を出すことがあります。
裁判所が親権についての意見を出す前提として、裁判官の判断により家庭裁判所調査官(以「調査官」といいます。)が介入し、調査をすることがあります。
調査官は、親権を希望する親や、親権が争われている未成年者に関し、
これまでや現在の親子関係、親子の意思、気持ちなどを聞き取り、未成年者と両親との関係や今後の見通しについてなど、
様々な面について確認します。裁判所が必要と認めるときは、
両親が未成年者を世話することを手伝ってくれる人物(「監護補助者」と呼ばれます。)
や未成年者が通っていた保育園や幼稚園・小学校などに話を聞きに行きます。
裁判所は、調査官が第三者の目線からどちらが親権者となるべきかをその専門的な知見に基づき行った調査の結果をふまえ、意見をいうことになります。
3 調査官や裁判所が、親権者を判断する基準
未成年者である子(以下「子」といいます。)の親権者を決めるのに重要なことは「子の福祉」です。
つまり、子にとってもっともよい状況になるようにという観点から、親権者を決定することになります。
子にとってもっともよい状況を判断するために、以下のような状況を考慮することになります。
(1)父母に関する事情
父母の、年齢、職業、勤務態様、収入、婚姻歴、健康状態、生活態度などを考慮します。
また、特に、子が乳幼児のうちは、母性が優先される傾向があります。
この考え方については、性別差別につながるとして、否定的な考えも増えてきています。
裁判例では、母性を母親に特定せず、「母性的な関わりを持つ対象となった養育者とされる」とするものもあります。
とはいえ、子が幼いうちは、母親が家事や育児をする家庭がまだまだ多い日本の現状では、
裁判所では母親が優先される傾向がいまだにあるといえるでしょう。
(2)監護に関する事情
これまでの婚姻生活および現在の監護の実績、居住環境、生活・教育環境、子と接することが可能な時間、監護について協力してくれる親族(親や兄弟など)の状況などが考慮されることになります。
また、重要なのは、子を監護する意欲があるかです。これまで、監護をしていなかった親であれば、
親権者(監護者)になりたい動機が問題になるでしょう。また、監護権をとった場合に、他方の親に対して面会交流を認めるのかなども問題になります。
(3)子に関する事情
そもそも親権者の決定にあたって最も重視される事項は子の福祉ですので、子に関する事情は重要な要素となります。
まずは、子自身がどちらの親と住みたいかの意向が優先されます。家庭裁判所は、子が15歳以上なら陳述を聴かなければなりません。
一方で、子が幼くて意思を示せない場合や、現在住んでいる親への遠慮や罪悪感から、
子の真意について慎重に判断しなくてはならない場合があることには気を付けなくてはなりません。
また、年齢が近い兄弟姉妹で、まだ子が低年齢の場合は、兄弟姉妹と共に成長していくのが子の人格形成にとって重要なことであると考えられ、
兄弟姉妹は分離しないことが適当であると判断されることもあります。
さらに、子にとって現在の学校から転校する必要があるのかなど、現在の環境からの変化の有無についても考慮が必要となります。
4 まとめ
調停の中で、親権をとるためにはどのような要素が考慮されるかはお分かりいただけましたでしょうか。
親権をとるためには、これらの中で自己に有利な事情を主張し、調査官に理解してもらえるように説明しなくてはなりません。
もし、離婚に際して親権のことでお悩みになれば、必ず弁護士にご相談くださいね。