シングルマザーを守る離婚とは
1 はじめに
離婚を考えている女性の中には、離婚はしたいものの、シングルペアレントになることに不安を感じている方がいらっしゃるかもしれません。
不安の中でもっとも大きいもののひとつとして、経済面の不安があるでしょう、
特に、子育て中で休職されている方や、専業主婦や専業主夫として家庭を支えている方などは、不安が大きいでしょう。また、働いている方でも、これから、シングルペアレントとして、これまで同様に子育てをしていけるか不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
子育て中の方は、離婚に備えてどのような準備や対応をすればよいのかを考えてみましょう。
2 親権について
まず、離婚にあたっては、親権者を定めなくてはなりません。親権を取った親が、シングルペアレントとして子どもを育てていくことになります。
親権者は、夫婦の合意で決めます。シングルペアレントになることを覚悟している場合は、ご自身が親権を持つことが決まっている方が多い方かもしれません。ですが、中には、夫婦双方が親権を主張し、話合いがまとまらない場合もあります。
親権についての話合いがまとまらなければ、最終的には、調停や審判、判決など、裁判所で親権者を決めることになります。裁判所で親権者を決める場合は、①父母の、年齢、職業、勤務態様、収入、婚姻歴、健康状態、生活態度など、両親に関するそれぞれの事情、②これまでの婚姻生活における子の監護の実績、③現在の子の監護の実績、④父母それぞれの居住環境、生活・教育環境、⑤父母それぞれが子と接することが可能な時間、⑥父母による子の監護について協力してくれる親族(親や兄弟など)の状況、⑦子自身の意思や、⑧兄弟の状況などが考慮されます。
子が幼いうちは、母親が家事や育児をする家庭がまだまだ多い日本の現状では、実務上では母親が優先される傾向が強いといえます。ですが、母親による虐待や母親の病気などがある場合や、その他の子の監護に関する事情を考慮して、父が親権者と定められることもあります。
3 離婚時に受け取ることができる可能性のある金銭について
(1)財産分与
離婚に際しては、これまで夫婦で築き上げてきた財産を分ける、財産分与をすることになります。
これは、夫婦が結婚してから得た財産については、その名義の如何を問わず、離婚に際して2分の1ずつ分けるというものです。
ただし、自宅をローンで購入している場合などでローン残額が大きく、トータルの財産がマイナスになる場合などは、分与すべき財産がないということもありえます。
また、夫婦双方が婚姻前から持っていた預貯金や、婚姻中に得た財産でも相続によるものなど、夫婦生活で作られたといえない財産は、基本的には財産分与の対象にはなりません。
(2)慰謝料
離婚の原因がパートナーの方にあり、その行為によりご自身が精神的苦痛を被った場合には、問題の行為を行ったパートナーから自身が被った苦痛を慰さめるために慰謝料を払ってもらえることがあります。典型的には、パートナーによるDVや不貞行為(不倫)があった場合です。
(3)養育費
離婚後、子の親権を獲得した親は、子を育てない方の親から養育費を支払ってもらえます。養育費は、夫婦の合意で決まらなければ、夫と妻の収入に応じて養育費算定表を元に算定されることが多いでしょう。
なお、離婚までの話合いが長引いて、離婚はしていないものの、別居している場合には、離婚までの期間に相手から月々の生活費として、婚姻費用をもらうことができます。
婚姻費用も夫婦の合意で決めることが前提とされていますが、決まらない場合は、裁判所によって金額を決めることができます。婚姻費用も算定表を元に算定されることが多いといえます。
(4)年金分割
年金分割とは、婚姻中に配偶者が自営業者ではなく会社員や公務員として働き、他方の配偶者がその扶養に入っていた場合に問題となる制度です。つまり、婚姻生活中、自営業者として国民年金保険料だけを納めてきた夫婦については問題になりません。
離婚に際し年金分割をする場合は、婚姻中扶養者として年金保険料を納めてきた配偶者の納付実績の一部を、被扶養者として保険料を納めてきた配偶者が受け取るという制度です。これは、将来受け取ることのできる金額の変更をする手続で、いますぐにお金が受け取れるものではありません。ですが、被扶養者として年金保険料を納めてきた期間がある場合、離婚後2年以内に年金分割をしておかないと、将来受け取ることができる年金額が少なくなるので、注意しましょう。
4 ひとり親のための支援
昔と異なり、現在では、ひとり親のために、様々な公的な支援制度が用意されています。たとえば、ひとり親家庭医療費助成制度や、高等職業訓練促進給付金、保育園の保育料の減免、公営住宅の優先入居などです。
離婚により、シングルペアレントになる可能性が出てきた段階で、まず役所でどのような支援を受けられるかについて相談するとよいでしょう。
5 まとめ
シングルペアレントになる覚悟を決めれば、あとは受け取るべきものを受け取って、生活を安定させ、前向きに子育てをしていってください。離婚や別居に際して何かお困りごとがあれば、お気軽に弁護士に相談してくださいね。