離婚を有利に進めるには「証拠」が大切
離婚をできるだけ有利に成立させるには、証拠集めが欠かせません。なぜなら、離婚調停(調停員が仲介する話し合い)で決着がつかない場合にも離婚を望む場合は、裁判で離婚が認められる必要があるからです。今回は離婚における「証拠」の重要性について解説します。一体どんな証拠を揃えておくべきなのでしょうか。
なぜ証拠が重要なのか?
繰り返すようですが、離婚裁判には証拠がとても大事です。
特に、離婚を希望する理由が、夫や妻の浮気、不倫といった不貞行為の場合、これらを裏付ける証拠が求められます。
お互い感情的になり、自分の言い分(主張)を延々と語ったとしても、それらが直ちに証拠にはなりません。
そのような主張が全部無意味というわけではないのですが、裁判では自分の言い分(主張)が証拠によって裏付けられて、はじめて意味を持ちます。
つまり、主張を立証するために、必ず証拠の提出が求められるのです。
上記のような裁判でのルールを、専門的な言葉では「証拠裁判主義」といいます。
あらためて、その内容を説明すると、証拠があってはじめて当事者の主張が認められる、という風に理解していただければと思います。
人間誰しも、自分に有利な主張をしがちなものです。
双方の言い分が食い違ったり、真っ向から対立することも少なくありません。
裁判官は、神様ではなく、人間なので、裁判の当事者や関係者の言い分を聞いただけで、
その内容が真実か嘘かを判断することは困難です。そこで裁判官は、当事者双方の主張を裏付ける「証拠」に基づき、最終的な判断を示すのです。
裁判官は、公平であることが義務付けられています。
つまり、妻と夫のどちらの味方でも敵でもありません。
公平な第三者として、当事者から提出された証拠によって確信できた主張だけを「事実」として認めるにすぎません。
特に、男女関係を巡るトラブルにおいては、感情を抑えるのが難しいかもしれません。
しかし、一旦冷静になって、まずは淡々と証拠を集めることが勝利への近道なのです。
離婚裁判で有利になるための証拠とは?
では、実際にどのような証拠が有効なのか紹介します。仮に、離婚裁判となった場合、離婚の訴えのほかに、慰謝料や財産分与、親権者の決定、養育費の額などが争われます。
調停のような話し合いとは異なり、裁判では「法定離婚原因」が必要です。簡単にいうと、裁判で離婚が認められるためには、「法律で定められた、離婚に相当する原因」が認められる必要があるのです。民法770条1項は、以下の通り、5つの法定離婚原因を定めています。
“第770条 (裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。”
これを簡単に説明すると、裁判で離婚を認めてもらうためには、
1.配偶者以外と性的関係を持つ「不貞行為」があること
2.同居や夫婦生活の拒否、扶養義務を怠るなどの「悪意の遺棄」があること
3.配偶者が「3年以上生死が不明」であること
4.配偶者が「回復の見込みのない強度の精神病」にかかっていること
5.「その他、婚姻を継続することがむずかしい重大な事由があること」
のうち、少なくとも、いずれか一つが証拠によって認められる必要があるということです。
では一体、どのような証拠が有効なのでしょうか。今回は離婚理由として特に多い、「不貞行為」と「悪意の遺棄」について具体的に見ていきます。
不貞行為の証拠
証拠を集めるのが難しい離婚原因のひとつが、不貞行為です。男女のプライベートな場面は、表に出ないのが普通ですから。
証拠としては、不倫、不貞行為、浮気などを裏付ける
・会話の録音テープ(音源)
・携帯電話やスマートフォンのデータ(メールやチャット履歴など)
・動画や写真
などが有効です。
ただし、これらの証拠を集めるために違法な行為を行うと、証拠能力が低くなります。
違法に証拠を集める行為とは、例えば、暴力で相手から電話を奪ったり、盗聴によって会話を録音したりといったものです。どこからが盗聴に該当するかは難しいのですが、ポケットにICレコーダーを忍ばせて会話を録音する程度ならば、証拠として採用される可能性が高いでしょう。このあたりは離婚裁判に詳しい弁護士の判断を仰ぐのが賢明です。
悪意の遺棄の証拠
夫(妻)が突然家を飛び出し、子供やパートナーを置き去りにして愛人の部屋へ移り住んでしまった。このようなケースが「悪意の遺棄」と呼ばれるものです。
これを証明するには、「飛び出したきり自宅に戻ってこない」という事実の裏付けが求められます。具体的には、以下のようなものが証拠として有効です。
・相手が別なところに住んでいるという資料や契約書
・別居の原因や時期が特定できる何らかの記録
・夫婦関係の継続を放棄する意思が確認できる手紙・メール
・生活費や養育費が振り込まれなくなったことが確認できる通帳の記録
証拠の選定・収集には専門家の意見を!
証拠を集めるために何をしてもいいわけではなく、裁判所から証拠として認めてもらうためには適正な方法で手に入れたものであることが求められます。また、不貞行為の証拠は極めてセンシティブでデリケートなものが多いため、専門家のサポートをうけて慎重に選ぶことをお勧めします。
何かとエネルギーを消費する離婚裁判ですが、できるだけ有利に裁判をすすめるために、弁護士に相談しながら冷静に証拠を集めていきましょう。