離婚して年金分割を行う方法

離婚においては、いくつかの重要な「お金」の話が登場します。有名なところでは慰謝料がありますよね。今回紹介する年金分割も、離婚時の重要なトピックです。離婚したあとの人生を左右する年金分割の注意点、できるだけ多くもらう方法などについて解説します。

専業主婦でも年金が増える?年金分割とは?

年金分割とは、それまで支払った厚生年金記録を、夫婦間で分ける制度です。
ですので、夫婦のどちらもが国民年金のみに加入している場合は対象外です。

年金額は最大50%まで増える

平成19年3月以前は、専業主婦(主夫)が離婚したとき、非常に低い水準でしか年金をもらえませんでした。しかし、夫婦関係は、お互いのサポートがあってこそ成り立つものであり、年金は外で働いている側だけのものではない、という考えが広まってきました。そのため、平成16年に法律が改正され、離婚後に夫(妻)の厚生年金記録の分割を受けられることになったのです。これが年金分割です。

年金分割を簡単に解説すると、専業主婦(専業主夫)の場合には夫(妻)が払った厚生年金記録の一部を妻(夫)が払ったことにする結果、婚姻期間中に厚生年金を払っていた夫(妻)がその部分を払ってなかったことになるというものです。共働きの場合は、婚姻していた期間の二人分の厚生年金納付記録を足して、多い方が少ない方に年金記録の一部を分けることになります。
ちなみに、年金記録が分けられる際の「一部」とは、「最大50%」と決められています。
「最大50%」のうちのどのような割合で分割されるかは、以下の通り、婚姻期間の時期によって違い、それぞれ「合意分割」「3号分割」と呼ばれています。

年金分割の種類

年金分割には「合意分割」と「3号分割」という2つの種類があります。

・合意分割
平成20年3月31日以前の婚姻期間中の厚生年金記録に基づき、夫婦間で話し合いながら分割の割合を決める制度。離婚後も分割することができますが、離婚したあとに片方が話し合いに応じなければ、合意分割ができないため注意が必要です。また、離婚した日から2年以上経過していないことが合意分割の要件のため、離婚する前に必要な手続きを取っておくことをお勧めします。

・3号分割
厚生年金に加入していない妻又は夫(国民年金の第3号被保険者)側から、夫または妻(厚生年金加入者)に分割請求を行う制度です。
婚姻期間のうち平成20年4月1日以降に、第3号被保険者であった期間のみが該当します。平成20年4月1日以降に婚姻届けを出した人に限られるわけではありません。

3号分割に該当すると、妻側又は夫側(国民年金加入側)から請求するだけで申請が通るため、お得な制度といえます。

年金分割に必要な書類と手続方法

合意分割の場合は、

・年金分割の合意書
・年金手帳
・国民年金手帳
・夫婦双方の戸籍謄本

が必要です。特に重要なのが「年金分割の合意書」ですね。いわゆる話し合いの結果を記載したものと理解してください。この合意書の作成がなかなか進まないという事態は、非常に多いのです。

また、3号分割の場合は、以下3点が必要です。

・年金手帳
・国民年金手帳
・夫婦双方の戸籍謄本

合意書が必要ない、と覚えておけばよいでしょう。また、請求する側がひとりで手続きを進められるというメリットもあります。

いずれの分割の場合も、「離婚した日から2年以内」という期限を忘れないようにしましょう。

合意分割でトラブルに発展しないために

ここまでの内容からわかるとおり、年金分割で夫婦や元夫婦が揉めるのは「合意分割」のときです。合意分割は共同作業であり、話し合いが必要だからです。しかし、離婚に向けて、または離婚した後に話し合う場合なので、スムーズにいくとは限りません。

万が一、合意できない場合は、以下のような書類を揃え、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。

・調停申立書
・年金分割のための情報通知書
・戸籍謄本

年金分割は夫婦それぞれの一生に関わる重大な問題です。離婚に強い弁護士のもと、計画的かつスムーズな年金分割を目指しましょう。当事者同士ではおさまらない話も、弁護士を間に挟むことで解決できる可能性が高まるので、ぜひご依頼をご検討ください。