モラハラ(精神的DV)で慰謝料請求するときのポイント
ここ数年「モラルハラスメント(精神的DV)」を原因とした離婚が急増しています。一方、実際に慰謝料を請求する段階になると、どう話し合って良いのかわからない方が非常に多い印象を受けます。
確かにデリケートな問題ですし、誰にでも気軽に相談できる内容ではありませんからね。一人で悩んでいる方も大勢います。そこで、特に解決が難しいモラハラ(精神的DV)で慰謝料を請求するにはどうしたらよいのか、ポイントをかいつまんで解説したいと思います。
モラハラ(精神的DV)とは何を指すのか?
まずモラハラやDVの定義ですが、一般的には以下のように定義できるでしょう。
・モラハラ…簡単に言い換えると「精神的暴力行為(DV)」です。相手を否定し、責任をなすりつけ、価値観を押し付け、侮辱するといった行為。
・DV…配偶者や恋人、親子、兄弟など、ごく親しい間柄の中で行われる物理的な暴力行為。
この2つに共通しているのは「利己的かつ一方的に親しい人を傷つける」という点です。肉体的か、精神的かを問わず他人を傷つける行為は、慰謝料請求の対象になります。
DVよりも難しいモラハラの慰謝料請求
モラハラも他人によって精神的に傷つけられていますから、慰謝料の請求自体は可能です。しかし、請求が認められるかどうかで、身体的DVとは大きな差があります。
身体的DVに比べてモラハラは慰謝料請求が認められにくく、請求額を算定するための基準額も決まっていません。モラハラで慰謝料の対象になるのは「精神的損害」なのですが、これをどう見積もるかが非常に難しいのです。
ただし、おおよその相場は存在しており、大体「50~300万円」という判断が出ることが多いです。もちろん被害を受けた側の精神状態にもよるため、300万円以上の請求が認められることもあります。
モラハラで慰謝料請求が認められた例は?
実際にモラハラが原因で慰謝料請求が認められた例を見ていきましょう。
例1:妻に対する心ない発言を続けた夫に対する慰謝料
慰謝料の金額…250万円
内容…10年以上に渡り、妻に対して心ない発言を繰り返していた夫に対し、250万円の慰謝料支払いが命じられた。裁判では、夫の非を認めつつ、婚姻期間の長さも考慮された。
東京地判 平成17年3月8日
例2:夫に対し自分勝手な態度をとり続ける妻に対する慰謝料
慰謝料の金額…80万円
内容…自分本位な妻の態度に対し、夫が慰謝料として500万円を請求。実際には精神的苦痛を認められ、80万円の支払い命令が下った。
東京地裁 平成17年2月22日
このように裁判で数十万~数百万の慰謝料支払いが認められるには、一定以上の婚姻期間や、継続的なモラハラ行為があることが条件になります。婚姻期間の長さや言動の内容が、慰謝料の金額に影響を与えるわけです。
モラハラで慰謝料を請求するときのポイント
身体的DVに比べて慰謝料請求が認められにくいモラハラですが、いくつかのポイントを押さえることで請求が認められやすくなります。一般的に、モラハラの慰謝料請求で重要になるのは、以下のポイントです。
・モラハラの内容(言葉、態度、頻度など)
・モラハラを受けた期間(夫婦であれば婚姻期間の中で何年か)
・モラハラに原因があったか(モラハラを受ける側に非があったか)
・モラハラを原因とする精神疾患があるか
・慰謝料を請求する相手の経済力
ここで特に注意したいのが、「モラハラの内容」を裏付ける証拠があるか否かです。音声や写真、メール、チャット履歴といった証拠が、モラハラによる慰謝料請求を成功させるための大きなポイントになります。
調停や裁判による慰謝料請求が近道
モラハラを受けている時点で、冷静な話し合いが行われる可能性は低いでしょう。そのため、最初から家庭裁判所に離婚調停を申し立てるのが、慰謝料獲得への近道です。このとき、相手に対する恐怖やトラウマが原因で冷静に調停をすすめられないならば、代理人として弁護士をつけるのが得策です。仮に調停が不成立になった場合でも、その後の離婚裁判において弁護士の力は必須ですからね。
婚姻期間中の言動を裏付ける証拠収集や、証拠に基づいた主張の方法など、適切なアドバイスとサポートを受けられます。デリケートで難しい問題になりがちなモラハラの慰謝料請求は、一人で悩まず、専門家の力を借りることをお勧めします。