弁護士が内容証明を送るメリット
誰かと約束を交わすとき、内容証明郵便によって言った・言わないを防ぐことはよくあります。内容証明郵便は、誰でも郵便局から送ることができますが、これを弁護士に任せることでメリットが生まれることは、あまり知られていません。そこで、弁護士に内容証明郵便を任せる(弁護士名義で内容証明郵便を送る)ことのメリットを解説していきます。実は不倫問題や個人間の債権債務問題など、様々なシーンで活用できるのです。
内容証明自体は「法的拘束力」を約束するものではない
勘違いされがちなのですが、内容証明郵便自体には法的な拘束力はありません。内容証明を送ったからといって、その内容に相手を従わせることはできないのです。内容証明は「送った郵便の内容を、差出日から5年間保存する」のが主な役割です。つまり、郵便を送った人の意思表示をした事実と意思表示の内容を公的に証明できるわけです。その結果、個人間での約束事や問題について、郵便を受け取った相手方に対し、「自分はこう主張したという証拠を残します」というプレッシャーをかけることができます。内容証明郵便を受け取った相手方は「送り主が主張を記録する意思があるのだから、むげなことはできない」と考えるわけですね。これも内容証明の立派なメリットです。
消滅時効の中断に有効!
また、債権債務関係(例えば、個人間でのお金の貸し借りの問題)では、「消滅時効の中断」に使えるというメリットもあります。消滅時効というのは、例えば、友人や家族にお金を貸した後、何もせずに10年が経過してしまうと、お金を返すことを要求できる権利(債権)が消滅する制度のことです。
“第167条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。”
つまり、お金を貸してから10年間一度も返済がなく、それに対する連絡もない場合には、消滅時効によってお金を返してもらえなくなるのです。しかし、内容証明郵便を送ることによって相手に返済を「催告」すれば、消滅時効は中断し、消滅時効の完成を6カ月間先延ばしすることができます。
内容証明に弁護士名を入れるとどうなる?
弁護士名義で内容証明を送ったからといって、内容証明自体の効力が変わるわけではありません。
しかし、上で述べたような「相手方に対する心理的なプレッシャー」の効果が一段と高まるでしょう。特に不倫問題における慰謝料請求や、お金の貸し借りに関する問題では、非常に効果的です。
一般的に不倫問題やお金の貸し借りにおいては、弁護士の名前で内容証明が送られてくると、相手方の態度が一変するということがよくあります。
内容証明郵便自体には法的拘束力がなくても、慰謝料や貸したお金を回収できる可能性が高まるのです。また、相手方が「弁護士をつけているので、本気だ」と感じることによって、ズルズルと問題を長引かせることが得策ではないと考えてくれた場合には、結果的に問題の早期解決に役立つことになります。
さらに、内容証明郵便の作成自体を弁護士に依頼すれば、法的根拠のある文章が作成できるので、後々の慰謝料請求や裁判へ発展したときに不利になることを防ぎ、有利な証拠として利用できます。
さらに請求額が140万円を超えるものについて代理人になれるのは弁護士のみです、そのため、140万円を超える不倫や離婚の慰謝料請求を内容証明で行うことによって、弁護士資格を有しない人物が介入してくることをけん制することができるという効果もあります。
このように法的拘束力以外の「付随的効力」が飛躍的に高まる、というのが弁護士に内容証明を依頼するメリットです。内容証明の性質(=法的拘束力がない)を考えると、これら付随的効力が高まる意味は非常に大きいといえるでしょう。