離婚後の戸籍と氏について
当事務所にお寄せいただいたご質問にお答えします。
夫との離婚を考えています。子どもの親権は私が持つとことになると思いますが、
子どもの苗字を変えるには特別な手続きが必要だと聞きました。詳しく教えていただけますか?
離婚届を提出すると、筆頭者でない配偶者が除籍され、婚姻によって性を変えた方は、原則として旧姓に戻ります。
ただし、旧姓に戻る人を親権者として定めた場合、子の氏の変更と戸籍を移動する手続きも行わなければなりません。
ここでは離婚後の配偶者の氏と子どもの氏の変更について詳しくご紹介します。
離婚後の戸籍の状態
離婚届を提出すると、筆頭者でない配偶者は除籍され、筆頭者と子どもがその戸籍に残ります(子どもの戸籍の移動については後述します)。
一方で、筆頭者でない配偶者は、婚姻前の親の戸籍に入るか(復籍)、自分が筆頭者として新たな戸籍をつくるか、いずれか2つの方法があります。
ただし、一つの戸籍には、同じ姓の人しか入れません。そのため、婚姻時の姓を維持するなど、親と姓が異なる場合は、親の戸籍には戻れないので、注意が必要です。
離婚後の当事者双方の戸籍には離婚歴が記載されます。
例えば、戸籍の筆頭者である鈴木太郎さんと花子さん(旧姓:山田)が協議離婚する場合、
太郎さんの戸籍には「〇年△月✕日 妻花子と協議離婚届提出」と記載されます。
そして、花子さんが新たに戸籍をつくる場合には太郎さんの戸籍に「△県〇市に新戸籍編成につき除籍」と記載され、
新たに作った戸籍にも「〇年△月✕日 夫太郎と協議離婚届提出」と記載されます。
旧姓に戻った花子さんが復籍する場合は太郎さんの戸籍には「〇県✕市 山田〇✕戸籍に入籍につき除籍」と記載され、
山田〇✕さんの戸籍に「〇年△月✕日 夫太郎と協議離婚届提出」と記載されます。
このように、夫婦どちらの戸籍にも離婚歴がわかる身分事項が記載されます。
なお、夫婦間に子どもがおり、除籍され旧姓に戻る配偶者が子どもの親権者になる場合、
三代戸籍禁止の原則(戸籍法第6条1項)との関係から、最初から、復籍ではなく新しく戸籍をつくったうえで、
後から子どもの戸籍をそこに移動させる手続きをとることをお勧めします。
子どもの氏を変更する手続き
上記の例で、花子さんに子どもがいて親権を花子さんが持つ場合、離婚によって花子さんは除籍になりましたが、
子どもは鈴木太郎さんの戸籍に残されたままです。子どもと母親を同一の戸籍にするためには、まずは子どもの氏を変更する手続きが必要となります。
先に子どもの氏の変更手続きを行うのは、同じ戸籍には同じ氏の人しか入籍できないためです。「子の氏の変更申立書」を家庭裁判所に提出すれば子どもの氏の変更が完了します。
入籍届の提出
家庭裁判所で子の氏の変更許可が下りた後に「入籍届」を市町村役場に提出し、子どもが親権者である母親と同一の戸籍に入る手続きをします。
これで子どもの氏の変更ならびに同一の戸籍に入るのに必要な手続きは完了します。
離婚後も婚姻中の氏を使用する場合の手続き
先述した通り、除籍した配偶者が婚姻前の氏に復するのが原則です。ですが、婚姻中に称していた氏を使用したい場合、
離婚届提出から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を役所に提出すれば、離婚後も婚姻中の氏の使用が認められます。
例えば、鈴木太郎さんと離婚した花子さんが離婚後も鈴木姓を名乗りたい場合、
この届出を提出すれば離婚後も「鈴木花子」を名乗ることができます。
この届出をするにあたって理由の記載は必要なく、鈴木太郎さんの了承がなくても花子さんの自由な意思で決定できます。
子どもの親権者である母親がこの手続きを行った場合、離婚後も子どもと同一の氏になりますが、戸籍はまだ父親のところに残されたままになっています。
母親と同一の戸籍にするためには、「婚姻の際に称していた氏を称する届」を提出たとしても、入籍届の提出が必要となります。