協議離婚で公正証書を作成するメリットとは

1 はじめに

夫婦が離婚する場合には、離婚に際しての条件を決めることが多いでしょう。

条件を取り決めれば、通常はそれを書面にします。これは、のちのちに、条件面で行き違いや、争いが生じた場合の証拠とするためです。

この書面を離婚協議書といいます。

離婚協議書はどのような形式でも構わないのですが、公正証書という公文書で作成する場合もあります。

そもそも離婚協議書とはどのようなものなのか、離婚協議書を公正証書で作成する場合はどのようなメリットがあるのかについて学びましょう。

 

2 そもそも離婚協議書とは?

離婚協議書とは、離婚時の話し合いで合意した条件などの内容を記載しておく書面のことです。

離婚協議書に記載する内容を決めるため、まずは夫婦間で話し合いをすることが必要ですが、その内容として以下のようなものがあります。

①離婚を合意した旨の記載

②離婚届はどちらが提出するか

③慰謝料がある場合はその旨と金額、支払い方法など

④財産分与(財産分与の対象となる財産やその支払い方法、支払期限等)

⑤子がいる場合は親権者の指定

⑥子がいる場合の養育費(月にいくら支払うか、いつまで支払うか等)

⑦子がいる場合の面接交渉(頻度、方法、宿泊の有無等)

⑧年金分割

これらについて合意をしたら、離婚協議書を作成することになります。

 

3 公正証書とは

公正証書とは、公証人という法律の専門家が法律にしたがって、公証役場で作成する公文書です。

公正証書は、法律の専門家が関与して作成しますので、内容が正確なうえ、高い証明力があります。

また、債務者(お金を支払わなければならない人)が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きといって、裁判所が強制的に金銭等を回収する手続きに移ることができます。

また公正証書は、原本が公証役場で保管されますので、紛失や改ざんのおそれがありません。

 

4 離婚協議書を公正証書にするメリット

(1)証拠としての価値が高い

すでに述べましたが、公正証書は、公文書であり、証拠としての価値が高いです。

そのような内容の公正証書が存在すれば、そのような内容の合意が夫婦の間でなされたものと判断されるでしょう。

 

(2)慰謝料や養育費等の不払いがあったときに給料や預金を差し押さえることができる

もし、慰謝料や養育費等の支払いが滞ったときも、公証役場で公正証書を作成して、手続をしておくと、すぐに差押えができます。

通常は、金銭の支払いを要求する場合に、相手が応じなければ、裁判所に訴訟を提起し、勝訴判決を得なければなりません。しかし、裁判によらずに強制執行を認める内容の公正証書を作成しておけば、裁判所を通じて強制的に給料や預金などから慰謝料や養育費等を回収することができるのです。

慰謝料や養育費の支払いの約束を相手が守らなかった場合に、裁判費用と手間(時間)をかけずに金銭を回収することが可能という点が、離婚協議書を公正証書にする多くの人の動機といえるでしょう。

 

(3)内容が正確

法律の専門家ではない一般の方が合意をしても、それをうまく文書にできなかったり、法的に誤った記載をしていたため、後で、合意の内容を正確に実現できなかったりすることがあります。

その点、公正証書は、その内容を法律の専門家である公証人が確認しますので、その内容に誤りがある可能性は低く、自分たちの合意を正確に反映した離婚協議書が作成できる可能性が高いでしょう。

 

5 公正証書を作成するデメリット

もっとも、公正証書は、自分たちで離婚協議書を作成する場合と比較して、手間と時間に加え、費用がかかりますので、その点がデメリットといえるでしょう。

 

6 まとめ

離婚協議書と、これを公正証書で作成することの意義についてご理解いただけたでしょうか。公正証書は、強制執行ができるメリットもありますが、なんとなく面倒くさそうだな、と二の足を踏む方もいらっしゃるかもしれません。いちど、法律の専門家である弁護士にお気軽に相談してみてくださいね。