モラハラ・DV!?その定義と対処法
1 はじめに
「モラハラ離婚」という言葉については、タレントの離婚などを機に世間に認知されるようになりました。
しかし、DVとモラハラは一緒なのか違うのか、モラハラという言葉の意味をきちんと理解している人は多くないかもしれません。
また、DVやモラハラは離婚の理由として認められるかについても、整理して理解している方は多くないかもしれません。
それでは、モラハラ・DVと離婚にまつわる問題について学んでいきましょう。
2 DVについて
(1)DVとは
DVやモラハラといった言葉を耳にする機会も多いと思いますが、
DVとは、ドメスティック・バイオレンスの略で、夫婦、恋人同士や家族の間での暴力のことを指します。
暴力と聞けば、殴る、蹴るなどを思い浮かべる方が多いかと思いますが、DVに当たる暴力の態様は実は幅広いものです。
(2)DVにおける暴力の種類
①身体的暴力
殴る、蹴る、つかみかかる、首をしめる、物を投げるなど、被害者の身体に向けて加害者が物理的に攻撃を加える暴力をいいます。
②精神的暴力
大声でどなる、命令にしたがわせ、おどす、無視する、携帯電話や郵便物を無断でチェックするなど、被害者を精神的に追い込む暴力のことです。
③性的暴力
性交渉を強要する、避妊をしない、中絶を強制するなど、性的なことがらに関して、被害者の自由を奪う暴力のことです。
④経済的暴力
生活費を渡さない、 加害者が一方的に浪費する、買物を勝手にすることを許さない、働くことを許さないなど、被害者の経済的なことがらに関する自由を許さない暴力のことです。
⑤社会的暴力
友人や親と会うことを許さないなど、交友関係を制限したり、人前で被害者のことを馬鹿にしたり、被害者の社会生活に関する自由を制限する暴力のことです。
3 モラハラについて
モラハラとは、モラル・ハラスメントのことで、道徳や倫理観を押しつける精神的な暴力です。
場合によっては、経済的暴力、社会的暴力の要素も合わせもつことがあります。
モラハラ加害者は、道徳や倫理の名の下に被害者の自由を制限します。
加害者は、「常識は○○だから、お前は非常識だ・・・」といった言葉によって、被害者の自由を制限する自分の行為を正当化します。
そのため、モラハラ被害者は、自分が世間からずれていておかしいのだと思い込みみます。
被害者が自分の考えや行動が周囲に明らかになることをはずかしく思い、隠そうとする結果、モラハラ被害を受けていることが周囲に分かりにくいという特徴があります。
4 DV・モラハラの対処
被害者は、「私が悪かったのかも・・・」「私が我慢をすれば・・・」と思ってしまう傾向があります。
つまり、被害者が加害者から一種のマインドコントロールをされている状態です。
そこで、まず、友人や、公共団体の相談窓口、警察などに相談することが大切です。
被害者のマインドコントロールが進んでいない場合は、カウンセリングなどで対応し、夫婦関係の改善を図ることもあります。
ですが、被害者のマインドコントロールが深刻な場合は、シェルターなどでの保護や離婚を検討することも必要になるでしょう。
5 DV・モラハラと離婚
(1)協議離婚・調停離婚
夫婦が話し合って、離婚について合意できれば、離婚できます(協議離婚)。
また、夫婦の間だけでは話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立て、
調停委員会に介入してもらうことで合意を目指すこともできます(調停離婚)。
残念ながら、DVやモラハラのケースでは、被害者が1人で調停に出る場合、
加害者が「自分が正しい」と思い込んでいることが多く、被害者も加害者の言い分に反論することに慣れていないため、合意にいたらない場合が多いようです。
そのため、調停においても、専門家である弁護士にご依頼いただくことで、調停の成立可能性が高くなります。
(2)裁判離婚
しかし、加害者の被害者に対する執着心が強い場合には、弁護士が介入しても、残念ながら調停では離婚できない場合もあります。
この場合、裁判所に離婚を認めてもらう離婚訴訟を検討することになります。
訴訟で離婚するためには、民法が定める離婚の原因(民法770条1項各号)が夫婦間に存在することを裁判所から認めてもらう必要があります。
民法が定める離婚原因には、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④回復の見込みのない強度の精神病、⑤その他、婚姻を継続しがたい重大な事由の5つがあります。DVやモラハラは、⑤「その他、婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたります。
裁判所にDVやモラハラを理由に離婚を認めてもらうためには、離婚を求める側が⑤が存在することを裏付ける証拠を出さなくてはなりません。
そのための証拠としては、暴力によってできた怪我や骨折などの診断書、暴言を録音したもの、暴力を録画したもの、過去の日記、加害者からのメールなどが考えられます。
どのようなものが証拠になるかは、ご依頼いただければ、一緒に探したいと思います。
とはいえ、スムーズに離婚するため、離婚を考えた段階からご相談いただくことをおすすめします。
6 まとめ
DV、モラハラについてご理解いただけましたか。
この記事を読んで、自分の配偶者の行為がDVやモラハラにあたることに気付いた方もいるかもしれません。
精神的な虐待は、心の殺人と言われることもあります。
1人で悩まず、必ず、専門機関や弁護士にご相談くださいね。